天然のディレイとリバーブについて。

Pinocoaの小話、今回はディレイとリバーブについて。

ディレイとリバーブってどのような感覚でしょうか?
ディレイはなんだかわからないけど、ボーカルの時に使う?!?
リバーブはエコーをかける?!?
デジタルに変わってからこれらはもっぱらプラグインになりました。

ワンポイント録音及び、ワンポイント録音を軸にしたマルチ録音方式では、プラグインを使って効果を得ることはほとんどありません。

よく料理に例えて解説されることが多いですが、プラグインはいわば調味料のようなもので、バジルやパクチー、塩、胡椒、オリーブオイル、バルサミコ。。。などなどの自然の調味料ならいいのですが、近年では、味の素や、ブイヨン、とんかつソース、化学調味料・・・などなどの不自然でなんだかよくわからない調味料(プラグイン)もたくさん存在しています。
ワンポイント録音や、それを軸にしたマルチ方式では、料理でいうと刺身や寿司、パスタなどの和食、イタリアンに近いものがあります。
調味料の使い方や調理方法よりも技と食材を重視します。
例えば刺身でいうと、包丁の入れ方、研ぎ方はもちろんですが、神経締めという技。
神経締めは魚が「死んだ」という情報を身に送ることができなくなるため、身の細胞はまだ生きている情報のままだそうで、本当に新鮮な採れたての、しかも神経締めで裁かれた刺身は文字どおり生け造りを楽しむことができます。
ピノコアは、このディレイとリバーブを天然のもので構成します。


突然ですが、音速はどれくらいのスピードかご存知でしょうか?

国際標準大気 (ISA) 海面上気温)での音速約 340 m/s となっています。(これは毎日変わります)
それは音速が気温や湿度などの外的要素によって、変化していくからです。

それで、どうやってディレイを創るのか?!!
メインマイク補助マイクを使い、ステレオペアの合計4chでの録音の場合、オンマイクとオフマイクの距離の差によって、天然のディレイを産み出すことができます。
もちろんこれらのメインと補助のマイクロフォンの選択、音源や音像に対して的確にマイクセットした場合の話です。
音速は以外と遅いんです。

100m走になると、スタートのピストルはかなり遅れて聞こえるのを思い出していただくとイメージしやすいかもしれません。

ホールやスタジオでも、オフマイクとオンマイクではかなりの差が出てきます。
小学校で習った「はじきの公式」を思い出してみましょう。

距離=速さ×時間
速さ=距離÷時間
時間=距離÷速さ

つまり、メインマイクAステレオペア補助マイクBステレオペアの距離を国際標準大気 (ISA) 海面上気温)での音速約 340 m/s で割れば、ディレイタイムを出すことができます。
そもそも補助マイクを使うケースというのは、特定の帯域が特に必要な場合、特定の要素が特に必要な場合などですが、そういった特に必要なケースでもない限りディレイは必要ありません。
つまり、必要な効果は必要な時に必要なだけ発生すると言えます。

これはワンポイント録音の不変の法則なのでしょうか。

必要なディレイタイムが決まっている場合のマイクセッティングは、必要なディレイタイムに国際標準大気 (ISA) 海面上気温)での音速約 340 m/s を掛けるとメインマイクAステレオペア補助マイクBステレオペアとの間に必要な距離が出てきます。
算数の先生以外は、電卓にやってもらいましょう。(単位を合わせるのを忘れずに)


もちろん意図的にこの天然のディレイの発生をゼロにする方法もあります。
ピノコアが採用しているZOOM F4には入力遅延タイムという機能があり、1~2chに対して3~4chは〇〇秒遅れて入力!という機能が搭載されています。
この入力遅延タイムももちろん「はじきの公式」で計算します。
補助マイクの成分だけ欲しい!!!!ディレイタイムはいらないんだ!という場合は意図的に設定可能です。
※これはあくまで理論値であって、それに付随した的確なマイクセッティングは必ず必要です。

このように、ワンポイント録音で複数のトラックを使う場合はエフェクトトラックとして使う場合が多いかと思います。


リバーブは?!?

僕は、父から彼ら世代(父もミュージシャンでしたが)のアナログでの制作の話をよく聞かされました。
例えば、リバーブも、スネアやタムを風呂場に持ち込んで、録音→それらを切り貼りして繋げたり。

切り貼りといっても、はさみツール→「あっ、そこじゃねぇ〜」→コントロールZ!じゃないですよ(笑)?

本物のはさみを使います。
それでテープカットするんです。
間違えたらコントロールZ押しても元には戻りません。
その昔子供時代の僕の家にもありました、確かティアックの8chオープンリールMTR。


もちろん全部がアナログでリバーブも10kgくらいあったかな?Rev7で制作していたものです。


幼い頃は、サンプラーで自分の声を録音してリバーブかけたりして遊んでいました。
なんという贅沢なおもちゃ(笑)
リバーブを作るには、メインの指向性マイクをオンマイク気味にセットし、無指向性マイクでオフマイク気味に録音、無指向性オフマイク(箱の残響を記録)の成分を足していきます。
これが最も自然で素直な天然リバーブ。

よくコンサートホールなどでは、残響○・○秒など記載があり、音楽家はこのデータを元にコンサートの構成を考えたりします。
ピアニストならもちろん残響によってタッチコントロールは大きく変わりますから、ピアニストは皆、箱の大きさ、残響具合でどうタッチを変えていくかのデータベースは常に持っています。
新しい箱で演奏する際は、自分がよく知る場所の残響時間と比較して、出てくる音のスピードをシュミレーションしていきます。
録音エンジニアももちろん、箱のサイズに対して無指向性マイクでの残響を捉える絶妙なポイント、それらをシュミレーションしながら編集でのリバーブミックスをイメージしていきます。

Pinocoaの録音、特にピアノ録音は現役のピアニストがしているので、奏者のタッチを観て、音のスピードや指向性、倍音の発生率などを一瞬で見極めて、それらに合わせた的確なマイクをセッティングします。

いかがでしょうか?!天然のディレイとリバーブ!の作り方。

考え方は星の数ほどあることでしょう〜録音の世界!
ピノコアの考え方としては、アコースティック音楽の録音、制作などでは「できるだけ調味料を加えずにシンプルで技が光る刺身を創っていきたい」と考えています。

もちろん優秀なプラグインをたくさん使い、緻密に計算しながら、最高の音を創り出していく世界も大好きです。
閉店してしまいましたが、フェラン・アドリアとジュリ・ソレールが経営していたエルブジの世界観!
これはこれで最高に楽しいのです。


リンク

Pinocoa総合プロデューサー:Kotaro Hattori